81 近道はない
何事にも、近道や楽な方法はありません。
例えば「学問に王道なし」といいます。
学問を修めるのに安易な方法はないということです。
「王道」とは王様専用の特別な近道という意味で、安易な方法や近道を表します。
エジプト王トレミーに
「もっと簡単に幾何学を学ぶ方法はないのか?」
と聞かれたギリシャの数学者ユークリッドが
「幾何学に王道なし」
と答えた、という故事に基づいています。
学問に王道なしですから、受験勉強は一夜漬けでできるはずがありません。
学校の定期テストを一夜漬けでクリアした経験のある方はいらっしゃるかもしれませんが、一夜漬けで覚えた内容は結果として頭に残りません。
短期集中型の勉強は記憶が定着しにくいのです。数日たつときれいさっぱり忘れてしまうでしょう。
ですから、基礎から応用へとプロセスを経て順に習得していくことが必要なのです。
目下の課題をクリアすることのみ追い求めて近道したつもりが、何かを省略してしまい、やるべきことが抜けている。
抜けたところを後から補わねばならず、余計に時間が掛かってしまった。
そんなことにもなりかねません。
小手先のテクニックを追い求めるのではなく、コツコツと努力を積み重ねることが大切です。
それが結果として大きな花を咲かせるのです。
すぐに成果をあげたい、効果を実感したい、一日でも早く達成したい。
そう思うことはもちろん大切だけれど、何かを成し遂げるには、地道な作業の積み重ねと粘り強い努力が必要です。
近道はありませんが、集中して取り組むことにより、達成するまでの時間を短縮することはできるでしょう。
また、そうすることによって、集中力や精神的な強さが育ちます。
一歩ずつ、着実に歩を進めていきませんか。
82 危険なもの
危険なもの、危ないもの、世の中には沢山あります。
そういったものは全て、子供から遠ざけていればいいのでしょうか?
年齢によって、遠ざけているべき時もあるでしょうが、時期を見て、使い方、対応の仕方を教えなければならないのではないでしょうか?
例えば包丁。
危険です。危ないです。でも、ずっと遠ざけていたらどうなりますか?
学校の調理実習で、生まれて初めて包丁を使う人もいるようです。
包丁を使わない人や家に包丁がない人もいる、と聞きます。
それでいいのでしょうか?
例えば公園の遊具。昔と比べ、一変してしまいました。
すべり台、ブランコ、シーソー、ジャングルジム…
様々な遊具が「危険」だからなくなっているようです。
もちろん使い方、遊び方を間違えたらとても危険です。
でも、排除するだけでいいのでしょうか?
使い方、遊び方を知ることは大切ではありませんか?
「すべり台は逆からのぼってはいけないんだよ。」
「ブランコに乗っている人がいたら、その後ろにいったら危ないよ。」
「ブランコに乗っている時は、鎖をしっかり握っていてね。」
「シーソーのここに手を置いたら、挟まれるかもしれないから気を付けてね。」
「あなたはまだ背が小さいから、ジャングルジムでこれ以上のぼったら危ないよ。」
周りの大人や年上のお友達が声を掛けてくれる、注意してくれる、そういったことはなくなってしまったようです。
自転車だって危険です。多くの人が自転車に乗ります。
でも、自転車の交通ルールを知らずに乗っている人もたくさんいると感じています。
子供が一人で出かけることだって危険です。
いつから一人で電車やバスで出かけるのか?
一人で出かけるために、知っておくべきことは何か?
危険なもの、危ないものの使い方、対応の仕方は、親が子供に是非教えて下さい。
83 本物に触れる
本物に触れるとはどういうことでしょうか?
シルクの服を着る。本物の宝石を身につける。
コピー商品でない本物のブランド品を身につける。
そういうことではありません。
テレビやパソコンの画面や百科事典などの本を通してだけでなく、直接、間近でそのモノを見たり触れたりしてみる、ということです。
緑が生い茂った山々を登ったり、その景色を楽しんだり、林の中で昆虫を捕まえたり、色とりどりの花を愛でたり、風に吹かれて揺れる葉をのんびり眺めたり。
畑に行って、野菜や果物がどのようになっているのか、自分の目で確かめてみるのもいいですね。
川や海に行って、水の冷たさを感じたり、砂浜や土の上を裸足で歩いて、その感触を覚えたり。
太陽の光を浴びること、雨に打たれてみることも本物に触れることです。
できることは身近に沢山あるのではないでしょうか。
本物に直接触れることにより、そのモノについて深く脳裏に刻まれます。
五感を通して記憶するのです。
そうすることによって子供の豊かな感性が磨かれていくでしょう。
感覚は使わなければ退化します。使うことによって研ぎ澄まされるのです。
利便性、合理性も大切ですが、それだけでは殺伐とした世の中になりかねません。
子供たちには温かい心を持った人に育って欲しい、と願っています。
子供たちが五感を磨き、豊かな人間へと育っていくよう、私たち親や周りの大人ができること、すべきことを意識していただけたら幸いです。
84 言ってはいけない言葉
「もう知りません。」
「そんな事をする子は嫌いです。」
子供がした事に対して、かっとなり、思わず口にした事はありませんか?
もしあったとしたら、今後口にしないように是非とも気をつけていただきたいと思います。
ルールを守らなかったり、危険な事をしたり、そんな時に子供を叱る事があるでしょう。
子供の反省を促す事は必要ですが、子供自身を否定する言葉はいけません。
大人になれば、もし自分を否定する言葉を言われたとしても、いくらでも対処方法や逃げ場があります。
けれども子供にはその術がありません。
親に見捨てられたと思ったら、子供はどうしたらいいかわかりません。
途方に暮れてしまいます。
ですから、どんなに怒っても、その言葉を発してはいけないと思うのです。
子供を叱る時は、叱るべきその対象についてのみ、わかりやすく、簡潔に叱って下さい。
85 伝えたいこと
子供に伝えたいこと、沢山あると思います。
どのように伝えていますか?
今までの経験から思うこと、自分の考え、子供の心に真っ直ぐ届いて欲しいですよね。
子供と向かい合って、目と目を合わせて話をするのがいいのでしょうか。
わざわざ時間をとって、背筋を伸ばして、そんな堅苦しい場を用意する必要はありません。
普段の何気ない会話のなか、お互いゆったりした気持ちで、リラックスした環境で、話せばいいのではないでしょうか。
例えば子供が
「今日学校でね…」
とその日の出来事、困った事、嬉しかった事など話したとします。
そんな時、まずは
「ふ~ん、そうなんだ。そんな事があったんだね。」
と聴いた事をそのまま受け止めて下さい。
それから、子供の話に関連するような自分の経験、自分が子供の頃の出来事を話してみて下さい。
なかにはちょっと格好悪い昔話もあるかもしれません。
親のプライドにかけて、そんな話は子供にしたくない。
そういう方はもちろん、無理に話せとはいいません。
ただ、ちょっと格好悪い話、そこから学んだ事、考えた事などを、子供に話してみるのも悪くはないと思います。
いま、格好悪いわけではありませんから。
お父さん、お母さんも色々な経験をしてきたんだな。
きっとそんな風に親近感を抱きながら受け取るでしょう。
親の目線、上から目線で話すのではなく、同じ目線で話してみる。
同じ目線で物事を捉えてみる。
そうすると、子供は素直に親の話を受け取るものです。
ちょっと試してみては如何ですか?
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